この度,分子生物学講座に赴任された柳田圭介教授のセミナーを通常のWednesday Morning Journal Clubで催します.
日時:2024-12-18 (水) 9:00-10:00
[演題]
脂質研究より紐解く脳固有の血管機能
[概要]
全身の様々な臓器を巡る血管のなかでも、脳血管は極めて個性的である。たとえば神経活動に応じて脳血流を調節するシステムを有し、さらには多種のトランスポーターを発現し、これにより絶え間ない脳の活動に必要な大量の栄養・エネルギーを担保している。一方で、脆弱な神経細胞を血液成分から守るため、脳血管には血液脳関門 (BBB) とよばれる強固なバリア機能が付与されている。これら脳固有の血管機能の破綻は様々な神経疾患の原因となる一方、生理的なBBBの存在は、脳内薬物送達の大きな障壁でもある。従って、その成り立ちや分子メカニズムなどの詳細な理解は、神経疾患の診断や治療法の確立に向けた喫緊の課題であり、世界中で盛んに研究が進められている。しかし未解明問題も数多く、なかなか突破口が開けていない。
脳固有の血管機能が獲得されるメカニズムについて取り組むべく、私たちは血管最内層を構成する血管内皮細胞に注目し、脳固有に発現する血管内皮細胞遺伝子について検証した。その結果、脳血管内皮細胞に特徴的に発現する遺伝子の多くが脂質代謝に関わること、さらに脳血管内皮細胞は極めて特殊な脂質組成や脂質代謝機構を有することもリピドミクスにより明らかとなった。以上のような背景から、私たちは「脳血管の個性がその脂質代謝により創出される」と仮説を立て研究を進めている。
本発表では、自己紹介として自身の研究の経緯を紹介した上で、「脳血管の個性がいかにして創出されるのか?」という謎へ脂質研究者としての取り組みについて紹介したい。